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Life is Adventure

すでに昼前。
「ガチャッ」という玄関の開く音に2度寝の気持ちいい睡眠を邪魔された。
前日に家族で映画を見るため、リビングに布団を敷いて寝ていた。
少し前に子供が新聞を取りに行ったのを覚えてる。
ふと、周りを見る。
全員居る。
ん?
飛び起きる。
玄関へ。
小さな男の子。
誰?
「なにしてんの?」
答えない。
落ち着き無く動き回る。
4,5歳位か?
キレかけの俺。
玄関を開けてみる。
誰もいない。
男の子は庭に飛び出す。
逃げる気配はない。
一人で遊びだした。
なんだこいつ?
イライラしながら質問攻め。
「どこから来た?」「名前は?」「お母さんは?」「何しに来た?」
一言も喋らない。
何かぶつぶつ声は出してる。
この辺で俺はようやくこの子が発達遅滞があることに気付く。
どうしたもんか?

「お母さんとこに連れてってよ。」
我ながら名案だ。
男の子は歩き出す。
色々話しかけてみるが相変わらず。
理解力が把握できない。
どんどん歩く。
石を拾う。突然走る。
通りかかる人に尋ねる。
「この子、何処の子か知りませんか?」
だって端から見れば明らかに俺は怪しい。
髭面にピアス。寝起きでジャージにぼさぼさ頭。
とても迷子を保護してるとは思えない。
どっちかってーと誘拐犯。

ん?
片方の靴に名前らしき文字が!
女の子みてーな名前だな。
○○○君?
「はいっ!」と手を挙げた。
おお!初めてのリアクション。
この感じじゃ保育園か幼稚園に行ってるな。
いや、養護学校の可能性もある。
この辺になるとすでに怒りも収まり、こいつがかわいく思えている。
犬の散歩中のおっちゃんに声をかける。
「この子見たことないですか?」
「イヤ、わかんないねぇ」
突然ギュッと俺の手を握ってくる。
そうか犬が怖いんだ。
よしよし待ってろ。
絶対家に連れてってやっから。

かなり歩いてから俺はふと思った。
こいつぐるっと回って俺んちに帰る気だ。
「ねぇホントにこっち?」
「あー」
解らん。

この坂を下ってしまえばもう俺んち。
まずい振り出しだ。
何か手がかりが欲しい。
そういえばこの辺に近所のボス・Sさんが住んでる。
おお!庭でなんかしてるじゃないか!
「Sさん!助けてください!」
事情を話すとSさんはすぐに動き出す。
何か思い当たるコトがあるらしい。
何日か前にもそんな話があって常習犯かもってことだ。
近所に人達に電話しまくって情報収集。
Sさんの隣に住む弟のTさんも来てくれた。
Tさんの話によるとこの辺で障害児を受け入れてる幼稚園は一つだけ。
Tさんの子供さんは障害児なんだ。
先生に電話してみるって。
俺は男の子と遊んでた。

おおよそ見当がついてきた頃。
向こうから女の人がきょろきょろ歩いてきた。
「男の子さがしてます?」
声をかける。
「はい。障害のある子なんですが・・・」
キタ!!
お母さんではないらしいが何人かでずっと探していたらしい。
Tさんが一緒に送ってくれることになって俺は帰った。

後でお母さんがお礼を言いにきた。
ちょっと目を離したスキに居なくなったらしい。
親の責任がどうだこうだ言おうかと思ったけどやめた。
幸い何事もなかったし。
あいつが歩いた道は幼稚園のバスの道らしい。
あいつにとっちゃ大冒険だったんだ。
いつも見かける変わった家に行ってみたかったのかもな。
いきなり怒って悪かったな。
でもお陰で俺もちょっとした冒険させてもらったよ。
正直ドキドキしたよ。
ありがとうを言わなくちゃいけんのは俺のほうかもな。

なんでもない日曜の昼の話だよ。
by genaniki | 2007-02-04 23:59 | 俺・・・
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